戌の日と犬張り子
■戌の日とは
その年の1日1日の干支から数えて12日に1度やってくるのが戌の日です。地域によって諸説がございますが日本では妊娠5ヶ月目の最初の戌の日に腹帯を巻き、安産を祈願する風習があります。
多産でありながらお産が軽い戌(犬)は「安産の守り神」として親しまれてきました。これにちなんで、戌の日に安産を願う「帯祝い」という安産祈願や犬張り子を送る事が定着したと言われています。
■御伽犬(おとぎいぬ)から犬張り子、そしてコミュニケーションツールへ
犬張り子の起源は、諸説ありますが平安時代のこま犬にあると言われています。
身の汚れ、災いを取り除くお祓いの道具として用いられてきました。
▲弊社製作の御伽犬(販売終了)
・→リンク ー文化遺産オンライン(東京国立美術館/犬箱写真)ー
室町時代には、災いを取り除く御伽犬(おとぎいぬ/おとぎとは身近に仕えるというような意味)を寝室に飾る習慣が生まれます。<顔は子供、頭は犬に似せられて作られ上下二つに分かれる箱形の置物です。
江戸時代に入ってからはもこの風習は続きます。江戸時代に入ってからは、嫁入り道具の一つになり、雛飾りにも使われました。
江戸中期になると箱型の犬張り子に対し、立ち姿を模したものが誕生します。初期の犬張り子は口を開いていて、現在の丸みを帯びた顔ではなく、犬らしい、細長い顔をしていました。
立ち姿の犬張り子は、粗末ながら洗練された単純さがあり、その姿は江戸庶民の心をとらえました。
紙の生産量も増大し、それに伴い、犬張り子のように髪を使用する玩具(張り子)の製作がたくさん行われるようになります。文化11(1814)年に刊行された「南総里見八犬伝」の表紙絵にも描かれています。
▲南総里見八犬伝表紙
江戸末期に近づくと、次第に縁起物的傾向が出てきます。かたちにも変化が現れ、丸みを帯びて現在の形に近づきます。そして江戸末期から明治にかけて、子供の成長に関わる儀礼と犬張り子とが、密接に関わるようになります。
犬張り子に子どもの健やかな成長を願うようになり、初宮参りの際には親戚や知人から犬張り子が送られる習慣が出てきました。
▲初宮参りに使われる犬張り子
子供たちへの愛は時代を超えて変わらぬように、現代においてもお宮参りの際の帯飾りに用いられたり、懐妊出産のプレゼントや歴史ある玩具としても愛され続けています。
一千乃では今もなお手づくり手描きにこだわり、神社様に納める犬張り子をはじめとして様々な犬張り子を作り続けています。
▲はりこーシカ®︎シリーズの犬張り子